嚥下障害治療

世界中のだれもが、安全に十分食べられるように

福村直毅

どんなに体が丈夫でも、食べられなくなればどんどん弱ってしまいます。飲み込みの障害(嚥下障害)は命を脅かすだけでなく生活の質を蝕みます。食べられない不安や絶望感は本人だけでなく家族やかかわる方々の心に暗い影を投げかけます。

もし嚥下障害があっても安全に食べられるなら、そして嚥下障害が良くなっていくなら、どれだけの方が救われることでしょう。私たちは嚥下障害治療の臨床と真摯に向き合い、効果的な嚥下障害治療を開発、実践してまいりました。

嚥下障害治療は人間が人間を治すものです。人間を育てなければ有効な嚥下障害治療は広がりません。しっかりした指導の下に学習すると治療能力が高まると期待できます。遠隔地でもできるだけ診察し、相談にのりますので、お気軽にご連絡ください。

健和会病院 総合リハビリテーションセンター長
福村直毅

当院の嚥下障害治療チーム

当院の嚥下障害治療チーム

いつでもどこでも、安心して食べられる地域へ

嚥下障害はゆっくり進むタイプと急激に進むタイプがあります。ゆっくり進むタイプは在宅など生活の場で見つけ出して治療する必要があります。急激に進むタイプは病院入院とともに見つかることが多く、入院中に治療する必要があります。そして治療後も回復や悪化に際して速やかに対応するために継続した受診が必要になります。
当院では「嚥下専門外来」・「往診嚥下治療」・「入院嚥下障害治療」の連携で速やかな治療開始と集中した訓練と治療、そして継続した治療を提供しています。

嚥下専門外来

嚥下専門外来

飲み込みのトラブルに関した診療を行います。
むせる、咳が続く、食べにくい、誤嚥性肺炎といわれた、など様々な症状に対応します。
嚥下内視鏡か嚥下造影で診察いたします。

往診嚥下障害治療

往診嚥下障害治療

飲み込みのトラブルがあるが病院受診が困難な方を診察します。
口から食べられない、肺炎を繰り返す、食事方法や食事形態の制限を変更したい、むせる、など様々な症状や状況に対応します。
嚥下内視鏡で診察します。

入院嚥下障害治療

入院嚥下障害治療
<回復期リハビリテーション病棟>

急性の疾患によって弱った嚥下機能の改善を目標に治療します。脳血管障害のかたは8割に、急性期病棟入院のかたは5割に嚥下障害があるといわれます。嚥下障害があると入院中の肺炎発生率が3割程度で栄養障害が生じやすく回復しにくくなってしまいます。適切な嚥下治療が回復を促進します。

当院ではどの病棟に入院のかたでも嚥下診察、嚥下治療を受けられます。お気軽にご相談ください。

完全側臥位法

日本発祥の嚥下障害治療法

日本発祥の嚥下障害治療法

座って食べると誤嚥するようになった時に、食事内容の変更とともに有効なのが姿勢の変更です。完全側臥位法は代表的な姿勢変更手技です。完全側臥位法は2006年に当院福村が発見、報告しました。

嚥下障害治療のご相談

  • むせる、咳が多くなった
  • 痰が増えた、黄色い
  • ガラガラ声になった
  • 頻繁に熱が出る
  • 体重減少
  • 食欲不振
  • のど・胸に食べ物が残る
  • 口の中に食べ物が残る
  • 食事時間が長くなった

嚥下内視鏡検査(VE)のメリット

  • 場所を選ばずどこでも施行可能
  • 造影剤を用いたり透視室に出向いたりする必要がなく、放射線被ばくもない
  • 実際に食事をしている時の、のど(咽頭)の様子を観察できる

当院は、外来検査と往診検査の2通りの方法をご案内させていただいています。

  • 外来検査希望
  • 健和会病院へ電話
    0265-23-3115
  • 予約センターで日時決定
  • 往診検査希望
  • 健和会病院へ電話
    0265-23-3115
  • 往診担当者から
    電話相談にて日時調整

当院の嚥下障害治療実績・報告

嚥下障害治療実績 2020年
嚥下障害患者管理数
回復期リハビリ病棟 111件
一般病棟 200件
嚥下往診 238件
嚥下外来 249件
訪問管理 ?件
嚥下検査件数
嚥下内視鏡検査 入院 732件
嚥下内視鏡検査 外来 249件
往診 238件
遠隔地支援
(上伊那地方・岐阜県中津川市・山形県庄内)
362件
嚥下造影検査 23件
嚥下障害治療に関する報告

平成29年度日本リハビリテーション医学会論文賞最優秀論文賞受賞

「回復期リハビリテーション病棟において、補中益気湯は脳血管障害後遺症患者の合併症発症率を抑制するー他施設ランダム化比較試験による検討ー」

福村 直毅, 山本 ひとみ, 北原 正和, 鎌倉 嘉一郎, 植木 昭彦,牛山 雅夫

  • 福村直毅,重度嚥下障害患者に対する完全側臥位法による嚥下リハビリテーション―完全側臥位法の導入が回復期病棟退院時の嚥下機能とADLに及ぼす効果― 総合リハ2012
  • 福村直毅,重度嚥下障害患者に対する完全側臥位法による嚥下リハビリテーション―完全側臥位法の即時効果:症例と咽喉頭モデルによる検討― 鶴岡荘内病院医誌 2012
  • 福村直毅,地域全体でチームをつくることで肺炎死亡数を減少させた嚥下障害管理.民医連医療;2014:38-43
  • 福村直毅,誤嚥性肺炎の治療と再発予防のコツ〈攻めの姿勢で嚥下障害とたたかう!―私の方法〉完全側臥位で早期経口摂取を目指す! Mon Book Med Rehabil No.160, Page.63-66  2013
  • 福村直毅,多職種連携による摂食嚥下リハビリテーションの院内肺炎予防効果日本医事新報, 43-49, 2016-04-09
  • リハビリテーションにおけるエビデンスの今 10.リハ栄養と嚥下障害に対するリハビリテーションの効果. Journal of Clinical Rehabilitation Vol.26 No.10 Page.984-988 (2017.10.15) 
  • 福村直毅,摂食嚥下障害者における完全側臥位法での食事方法. 臨床栄養Vol.132, No.5,Page.516-517 (2018.05.01)
  • 村直毅,生活期リハビリテーションの現況と課題 生活期の嚥下の評価とリハビリテーション.Journal of Clinical RehabilitationPage.1285-1292 (2018.12.15)
  • 井出浩希 (三紲会), 井出浩希 (介護老人保健施設たかはら リハビリテーション科), 工藤浩 (国保 飛騨市民病院 内科), 福村直毅, 高井穂乃佳 (介護老人保健施設たかはら 栄養科), 洞口拓也 (介護老人保健施設たかはら リハビリテーション科), 冨田茜 (介護老人保健施設たかはら リハビリテーション科), 小森弘子 (介護老人保健施設たかはら 看護科)、介護老人保健施設における福村式簡易嚥下分析に基づいた誤嚥対策の肺炎予防効果.総合リハビリテーションVol.47, No.7, Page.683-689 (2019.07.10)
  • 山本ひとみ, 牧上久仁子 (健和会病院リハビリテーション科), 牧上久仁子 (城南福祉医療協会大田病院リハビリテーション科), 福村直毅, 牛山雅夫 ,回復期リハビリテーション病棟における積極的摂食嚥下リハビリテーションの院内肺炎予防効果.日本老年医学会雑誌Vol.56, No.4, Page.516-524 (2019.10.25)
成書
  • 医療・看護・介護で役立つ嚥下治療エッセンスノート.全日本病院出版会 2015
  • 経口摂取アプローチハンドブック.日本医療企画 2015
  • 脳卒中リハビリテーション第3版 医歯薬出版 2013
  • 臨床医マニュアル第5版 医歯薬出版 2016 脳卒中分野担当
  • 経口摂取を諦めない! 新しい嚥下リハ「完全側臥位法」の理論と実践.医事新報社
    https://www.jmedj.co.jp/premium/flpo/
学会報告
2021.7.1 福村直毅,けんこう教室 嚥下障害 命に関わることも.いつでも元気
2020.10.27 福村直毅,生活期嚥下障害管理のリスク 窒息・肺炎・栄養障害.Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
2020.01.30 福村直毅,これで困らない!嚥下・栄養・離床まるわかりガイド ヘッドアップでも危険?誤嚥性肺炎をシャットアウトする完全側臥位嚥下法の理論と実践.早期離床
2020 福村直毅,軟口蓋が原因となって送り込みが阻害された症例.Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
2020 福村弘子,摂食嚥下障害看護認定看護師がパーキンソン病患者に長期的に関わることで見えた看護展開. Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
2020 原純一 (きらり健康生活協同組合 上松川診療所 歯科口腔外科), 福村直毅,介護用ウルトラ寒天による半固形化栄養剤が人工胃液を取り込む効果について. JSPEN(Web)
2019 牧上久仁子 ,気管切開カニューレカフ上への室内気連続送気の唾液誤嚥予防および摂食機能改善効果. Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
2019 福村弘子,「完全側臥位」姿勢保持を安定させる枕の開発. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会抄録集(Web)
2019 小池みらい,一口量の増加が経口摂取量の増加と食事時間の短縮に繋がった一症例.日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会抄録集(Web)
2019 阿部由利 (特別養護老人ホーム寿康園), 福村弘子, 福村直毅 ,特別養護老人ホームにおける多職種連携による経口移行への取り組み.日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会抄録集(Web)
2019 福村直毅,粘性抵抗測定を活用した重度送り込み患者に対象を絞ったシリンジペースト食の開発.日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会抄録集(Web)
2019 栗澤祥平,当院回復期における県外から入院した患者家族を中心とした完全側臥位法の退院支援 .日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会抄録集(Web)
2018 山本ひとみ,食事中の窒息と診断されるも,蘇生後のVEにて球麻痺が判明し,脳梗塞の先行が示唆された一例. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会抄録集(Web)
2018 山本ひとみ,市販の「のみや水」を使用し,簡便においしいトロミ食を作成した試み.日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会抄録集(Web)
2018 栗澤祥平,完全側臥位で経口摂取を開始し機能回復に伴い座位摂取が可能となった3症例.日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会抄録集(Web)
2018 福村直毅,咽頭喉頭空間の機能把握を目的とした閉鎖式咽頭喉頭透明モデル制作.日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会抄録集(Web)
2018 福村弘子,完全側臥位法取り入れ直後から3年経過後の食事介助スタッフの意識変化.日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会抄録集(Web)
2015 一般病床入院中の胃瘻患者の嚥下機能評価結果~経口摂取再獲得率は年齢や認知症,栄養状態で変化するか~. 静脈経腸栄養学会Vol.30, No.1, Page.370
2014 回復期リハビリテーション病棟に入院した胃瘻患者の転帰に影響する要因―特に高齢胃瘻患者と拒食の関係―Jpn J Rehabil Med Vol.51, Page.S250
2014 くも膜下出血後の重度嚥下障害で胃瘻造設後に回復期リハを機軸に多施設で治療し座位で常食摂取に至った症例.摂食嚥下リハVol.20, Page.2NN-P32-02 (WEB ONLY)
2014 0度仰臥位での経口摂取.摂食嚥下リハVol.20, Page.2NL-P22-10 (WEB ONLY)
2013 間欠的口腔食道経管栄養法実施時におけるカテーテル胃内到達判別方法としてpHセンサーを用いた取り組み.静脈経腸栄養Vol.28, No.1, Page.518
2013 低酸素脳症後遺症の乳児に対する完全側臥位法の効果. 摂食嚥下リハVol.19, Page.SP2-6-1-6 (WEB ONLY)
2013 急性期嚥下障害管理における完全側臥位法の効果. 摂食嚥下リハVol.19, Page.SP2-6-1-5 (WEB ONLY)
2013 無線CCDシステムを用いた嚥下内視鏡を用いて回復期病棟での治療前後に地域に出向いて診療し経口不能から常食に至った一例. 摂食嚥下リハVol.19, Page.SP2-2-4-5 (WEB ONLY)
2012 喉頭蓋の変形,安静時位置と喉頭侵入を防ぐのに必要なとろみ剤量の相関について. 摂食嚥下リハVol.17/18, Page.1-P-7 (WEB ONLY)
2012 気管切開造設とレティナカニューレ,一方弁の使用にて2カ月で経口での栄養摂取に至った重度嚥下障害の一例.摂食嚥下リハVol.17/18, Page.1-I2-18 (WEB ONLY)